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兵庫県立大学大学院看護学研究科 21世紀COEプログラム
能登半島看護最前線

震災発生日より出向いた研究員からのレポート
 
2007.04.06〜2007.04.08
能登半島地震被災地での看護・保健活動を支援するため、慢性班の3名(森菊子・安井久美子・元木絵美)は、看護ネットワーク班の牛尾裕子先生と穴水町へ向かいました

 現地穴水町では、既に保健センターが把握している要援護高齢者への訪問は終了し、65歳以上の方がいる世帯への全戸訪問が始まっており、その活動に参加してきました。我々4名は2名ずつに分かれて、訪問リストをもとに2日間訪問を行いました。また、避難所に宿泊させていただき、避難所での健康状態や生活について伺うことができました。

 
避難所の看護スタッフ休憩室にて
 
 町では損壊した家屋の取り壊しや修復が少しずつ進んでおり、全壊した家屋の取り壊し作業や屋内の片付け、今後の生活やいまだ続く余震に対する不安が、心身への大きなストレスとなっていることを感じました。今も続く余震に対して、「揺れるとめまいがして、血圧が高いのか解らなくなる」「ふわふわして気分が悪い」「1人で家にいると心細い」「胸が締め付けられる思いがする」「パジャマを着て寝れない」などと語られる方がいらっしゃいました。
 

 災害時の血圧への影響については文献でも言われていますが、高血圧で治療している人における血圧コントロールの悪化や、血圧が高めと言われつつも内服しないで経過をみていらした方の血圧への影響が大きいようでした。訪問時に血圧を測定して上昇していることにはじめて気付かれたり、あまりの上昇に驚いていらっしゃるという状況がありましたが、「頭痛」や「ふらっとする」など高血圧の症状を感じていても、病院へは行かず様子を見ている方もおられました。災害後の血圧への影響の大きさについて実感させられました。

 避難所に避難されている慢性疾患患者さんにとっては、いつもと違う生活そのものが病気を悪化させるストレスになりますが、損壊した自宅の片づけ等で活動量が増えたり、避難所で用意される食事内容の影響もあり血糖のコントロールが難しくなっておられる状況がありました。また、多くの方は、昼間は家の片づけに出られ、夕方に戻っていらっしゃるという生活をされていましたが、避難所で1日を過ごす高齢者の方においては、活動量が減って体重が増加していることへの健康への影響が心配されていました。慢性疾患患者さんが非常時に自分に合った療養法を実施することがいかに難しいか、改めて実感しました。


報告者 看護ネットワーク班:牛尾裕子        

慢性病班:森菊子 安井久美子 元木絵美
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2007.05.01

避難住民とケア提供者へのこころのケア(穴水町)
 穴水町での支援活動に出向いた先発隊(看護ネットワーク班)から、避難所に身を寄せている被災者の方々への心のケアに関する要請を受けて、精神班の教員2名が3月31日(発災後6日目)に現地入りしました。

 3ヶ所の避難所を訪ねましたが、この時期には、被災した家屋の片づけに出向いて夕方避難所に戻ってこられる方々が多く、日中の避難所には高齢者や子どもたちが残っていました。高齢者の方々には、地震のショックや先行きの見えない不安、慣れない環境での集団生活のストレスや運動不足から、睡眠障害や便秘等の身体的な不調を訴える方も多くおられました。体験を傾聴しつつ血圧や体調を気づかい、マッサージをしたり、緩下剤や睡眠薬の処方に関する診療所や巡回の医師との連携について看護師の方と話し合いました。

 特に、一人暮らしのお年寄りは被災家屋を見に帰ることさえも怖くてできないと訴えられ、片づけや手続きを一緒に行う援助を必要とされていました。とりわけ、過去にも大きな被災体験をもつ方は深刻なストレス反応によって覚醒亢進の状態が続き、援助者の方々も心配しておられましたので、まずはじっくり傾聴し、その上で睡眠障害と高血圧を気づかい、睡眠薬の処方について巡回予定の“石川県こころのケアチーム”に橋渡しするよう、看護師と町職員の方にお願いしました。また、ボランティア看護師の方々に活用していただけるよう、持参した『看護者のための災害時心のケアハンドブック』20部をお渡ししました。

 町職員や看護師、保健師、ボランティア看護師などケア提供者の方々も震災後ずっと奔走し続けて疲労が蓄積している様子が伺われたため、休養をとることの必要性とストレスマネジメントについてお伝えし、災害後中期以降に予想される心身の不調への対応と支援体制づくりについて話し合いを持ちました。


報告者 精神看護ケア方法の開発プロジェクト: 近澤範子 青山のぞみ
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2007.04.06
 
ボランティア代表者会議への出席
 
在宅高齢者の戸別訪問

被災地の住民と看護職への支援を継続する為に被災地へ
 地震発生直後から穴水町で活動している教員の報告や、テレビに写る高齢者の多い避難所の様子から、継続的な高齢者支援の必要性を感じ、我々2名は被災地に向かった。輪島市門前町で支援活動を行っている看護専門職から、「高齢者用の下着がない」「タンパク質がとれない」という情報が本学に届き、教員らの義援金による支援物資を載せて3月28日夜半、現地に向かった。
 穴水町の3カ所の避難所では、ライフラインは早期に復旧しており、日常生活に必要な物資は種類が限られているものの一通り整えられており混乱した状況ではなかった。しかし、現地の保健師にはかなりの疲労がうかがえ、先発隊の活動を引き継いで避難所での3交代勤務に入った。

被災後避難所や在宅で生活する高齢者の状況と支援活動
 避難所(穴水町保健センター)に避難している住民のうち、約8割は高齢者であり、地震から一週間を経過する中で、慣れない片付け作業による腰痛や下肢痛の悪化、また血圧の上昇や頭痛、不眠傾向などの健康障害が生じていた。また長年住み慣れた自宅が損壊したショックや今後への不安を話される被災者も多く、特に自宅に戻れない人に対しては、精神的な支援の重要性を痛感した。今後避難生活が長引くことで危惧される健康問題の発症に対しては予防的に関わることが必要であるが、気兼ねや我慢をしがちな高齢者に対して、交替制勤務の中での情報の把握や伝達、ケアの継続性に課題が感じられた。

 
 

 また現地保健師の状況として、避難所の運営管理という新たな業務を抱えて奔走しており、在宅の気がかりなケースがありながら訪問活動ができていない現状を知り、我々が戸別訪問を行うこととなった。訪問には現地の一般ボランティアの方が道案内で同行し、1日半で合計16件の高齢者宅への訪問を行った。被災後精神的に落ち込んでいたり、活動量が減少し閉じこもりがちになっているなど心身機能の低下が懸念される高齢者、また、認知症の行動障害が悪化して介護家族が疲弊しているケースもあり、災害がもたらす高齢者への様々な影響を感じた。これらの状況については、保健師に情報提供を行いケアが継続できるようにした。

 また、本学COEの一員としての支援活動としては、主に他の看護ボランティアにケアパッケージや「知恵袋」などを用いた知識提供や、高齢者の避難所での支援に関するアドバイスなどを行った。

 4月1日、穴水町の3カ所の避難所が保養所1カ所に集約されることが決定された。今後、支援活動に携わる看護ボランティアに活用してもらえるよう、知恵袋やケアパッケージを新避難所に搬入後、帰路についた。



報告者 高齢者班: 松岡千代 川口幸絵
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2007.04.01
避難所の一つ、公立穴水総合病院と穴水町の保健センター

地震発生直後からの活動と被災した人々の健康状態

3月25日(日)9時42分、地震が発生したことを受け、教員1名学生1名は、救援物資を車に積めるだけ積み、当日夕方大学を出発した。

被災地に近づくにつれ亀裂の入った道が多くなり、翌日朝ようやく穴水町役場に到着した。役場職員の方へ「兵庫県立大学の○○です。私たちは看護職です。看護専門職として何かできることはないでしょうか」と申し出たところ、避難所(当初3ヶ所あり)の看護活動を中心に行って欲しいとの要望があった。そこで、その日から29日の4日間、私たちは穴水町の避難所での看護活動を展開した。

 
 

震災当日は避難所へ100人前後の住民が寝泊りし、余震が続く中、一睡もできずに不安な夜を過ごしていた。避難所の特性により、環境のよい避難所に要介護者を移動するということが翌日より行われた。

27日からは石川県の指示により被災した地域(輪島市、七尾市、穴水町)で統一された健康調査が開始となり、穴水町では半数以上の人が何らかの健康問題(高血圧、不眠、気分不良、発熱、脱水、便秘など)を抱えていることが判明した。感染予防に加え、水分摂取するよう声をかけていったが、トイレへの不便さなどからどうしても水分を控えがちであり、飲水しているのかを確認をしていくことも必要であった。

また、家の片付けで疲れて避難所に帰ってくる人と、避難所で過ごす人はみんなと思いを共有したいと夜になっても地震発生時のことを話したりしており、そのことにより就寝できないイライラが高まり、住民間のトラブルに発展してきたりした。

 

被災地の看護職をサポートすることの重要性

被災住民をサポートしている現地の保健師らは自分自身も被災者である。しかしながら、同時に救援者としての役割を担い、地震発生後より避難所運営とケア活動、在宅避難者の安否確認などを殆ど24時間体制で活動していた。こちらから「私たちがいる間だけでも休んで下さい」と声をかけると、「ボランティアの人が働いているのに自分だけ休むわけにはいかない」「他の所に比べたらここはまだマシだから」と言われハードな勤務をこなしていた。

こうした状況から看護職の支援体制を確立する必要性を感じ、石川県看護協会との連携をして、看護職の派遣が開始された。また、本学からも、災害看護専攻学生1名、老人看護学講座より2名の教員、精神看護学講座より2名の教員が現地入りすることになり、私たちの活動は次のステップへと引き継いだ。この間には、大学からの全面的なサポートとともに、石川県立看護大学の方々の支援もあり、多くのサポートをいただいたことに感謝したい。

今後、生活復興までの長期化する避難住民の心身のケア、現地の看護職の心身へのケアに加え、全戸訪問、ボランティアへのサポート(一般、専門職)も加えて必要となってくるだろう。

報告者 看護ネットワーク班: 渡邊智恵・高村理絵子
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